「稚内に行ってみたい。」
そう言うと大抵の人からは
「なんにもないよ。」といった言葉が返ってくる。
本当に大抵の人はそう言っていた。
でも北海道に来たからには行ってみたい魅惑の地、北の果て、稚内。
そんなわけで札幌方面からオロロンライン(日本海側)を通って稚内市に向かっていくと、とんでもないことが起こった。今回はそんな話です。
ルートはオロロンラインルート。ひたすら日本海を左に見ながら北上していく道。
日本海の荒波に削られた岩々が続くワイルドな光景が続くが、時折土地のグルメが楽しめる道の駅などあり、楽しげなルートである。
オロロンラインは景色が良いのでドライバーたちには大変人気のルートでもある。
だがしかし、北上するにつれだんだん車窓から「文明」が消えていく。最初は「いいねえ、これぞ北海道だ」なんて言っていられるのだが、そのうち不安になるほど何もかもなくなっていく。
視界いっぱいに広がる草原、そこに並んだ風力発電機。
これだけでも何もないと言えなくもないが、本当の何もないはこのレベルではない。なぜならこの風力発電機も高度な「文明」であることには間違いない。文明には人の気配があるのだ。
ブレードが並ぶこの光景は、すごいとは思えど不安になるほどではない。もっと北上するとこの大きなブレードも視界から途切れる。
上の写真。さっきよりさらに何もないがよく見ると電線が続いている。電線は文明の証であり、まだ心には余裕がある。
「広いねぇ」なんて言っていられる。電線があるからにはこの先には電気をつかう「文明」が待っているという感じがあるからだ。
道の途中がこれくらいの雰囲気なら不安にはならない。
問題はここから…
ここまできてさすがに心に不安がよぎる。何もないが度を超えている。前を向いても後ろを向いても同じ景色。終わりが見えない。
これが内陸部であれば、ここを超えればまた市街地があるのだろうという予想もつくが、自分は今最北端に向かっている身である。
電線はいつのまに視界から消えてしまったのか。
当然街灯もなく、夜ここを通ったらさぞ怖かったに違いない。北海道でありながら、ヒグマさえいなさそうな「何もなさ」を感じる。
この先に文明の利器は何も望めない、そんな雰囲気の道がひたすらまっすぐに続いている。
人々が行っていた「何もないよ」とはこれだったんだ。
うっすら心に覚悟が生まれた頃、急に景色が一変する。
稚内市に入ると、なんと途端に都会らしい景色が広がる。
スーパーや駅はもちろん、ドラッグストア、ゲームセンター、ダイソーもあるしドライブスルーのマクドナルドもあればなんとデパートまである。
デパートというのは西條さんである(上写真)。宝くじのチャンスセンター(日本最北売り場)まである。入口には焼き鳥の軽トラまで来ている。テナントとしてミスドまで入っている。
現在では厳密にはスーパーに分類される店かもしれないが、佇まいや内装、店の造りは紛れもなく百貨店であった。地元の人たちもデパートとして認識していると思う。
駅周辺も開けている。
この辺りに来ると急に交通量もぐっと増え、商店街もタクシーも、なんだか何もかもがここにはあるという気がしてくる。さっきの「何もない」景色が幻想だったように思われる。
最近新しくなった稚内駅はとても大きくきれいで、広いお土産店やカフェスペース、二階にはキッズルームや映画館まであった。
さっきまでの「何もない」からのこの変化にちょっと気持ちが追い付けない。さっき文明との別れを告げたところだったので実際よりずっと大都会に見える。
実際稚内にはパチンコ店もあれば水族館もある。隣接された青少年科学館は楽しげでちょっとした遊園地のようでもある。
稚内の多くの人の生活圏である潮見や富岡のあたりなどは賑わいがあり「北の果て」の予想を簡単に覆してくれる。
何もないから突如一変するこの光景は、私のような初めての者には奇跡の大都会。忘れられない旅となった。
ちなみに稚内のデパート「西條」さんではさくらんぼが安かったのでたくさん買って宿で食べましたとさ(よかったね)。
稚内市街地(西條稚内店周辺)へのアクセス
“北海道の北の果てに突如現れる奇跡の大都会―稚内” への1件のコメント
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