ゴールデンカムイで寄り道さんぽ#6、今回は旧山本理髪店で寄り道を。
尾形の狙撃手としての腕のモデルはカルロス=ハスコック(トーマスケベック)、名前のモデル説としてあがったのは尾形亀之助、では外見のモデルは?もしかしたらこれじゃないだろうか。
尾形のモデルは「山猫は眠らない(映画)」の「トーマス=ベケット」と言われていて、作中でも尾形は何度も山猫に例えられていた。さらにその映画のモデルとなったのが実在した伝説の名スナイパー「カルロス=ハスコック」。独特な銃の構え方が似ている。
カルロス・ハスコックが北ベトナムの将軍を狙撃した際、小さな水筒の水飲みで三日間過酷な匍匐前進で狙い打づけた任務があったが
極寒の地で雪を口に含み続けて狙撃できる瞬間を狙い続けた尾形と、狙撃手としての執念も通じるものがある。
尾形百之助の名前のモデルは尾形亀之助(詩人)ではと言われていた時期もある。作中詩人ぽさは一切ないようにも見えるけどね。杉元佐一の「一」への対比としての「百」なのではという声もある。
人物としてのモデルがカルロス・ハスコック、名前のモデルが尾形亀之助なら、外見のモデルはこの山本理髪店の客じゃないかな。このマネキンは北海道開拓の村内にある。
聖地開拓の村
人気作品「ゴールデンカムイ」(野田サトル作)の聖地の中でも、札幌市厚別区にある北海道開拓の村は人気が高い。なにしろ明治~昭和初期あたりの建物をあつめて保存した野外博物館で、作品のモデルとなる建物が目白押しなのだ。
そのなかでも「旧山本理髪店」はゴールデンカムイ作中に「山本理髪店」としてそのまま出てくるので一番分かりやすく人気が高い。
二つの賭場が争う殺伐とした空気の町で、肝が据わっているような淡々とした理髪店主がこのドアから登場する。ここに土方歳三と永倉新八が訪れた少し後に、尾形百之助もやってくる。
理髪店主「……で あんたはどっちに売り込む気だ?」
ゴールデンカムイ 第55話
この客のマネキンが尾形に似ている。そっくりである。この時代に(オールバックは多いが)ツーブロックなのは多分このマネキンと尾形しかいない。服装もあの白い脚カバー(脚絆?ゲートル?)がないだけであとは似ているし、白い散髪用のクロスも狙撃手尾形が愛用していたフォルムを隠すためのあの外套に見えてくる。
ちなみに少なくとも10年前ここに訪れた時からマネキンは変わっていないので、連載始まる前からこのお客さんはいました。連載前の取材時にもこの姿のマネキンがいたはず。
理髪店主もちょっぴりロン毛。明治期の偉人の写真をみていると意外にロン毛が多い。そしてオールバックが多い。髷を結っていたのは遠い昔でも散切り頭の名残があるのか、「自由」の時代だからか、結構いろんな髪型があるがこれが昭和初期に入ってくるとほとんどの男性が軍に入るので坊主一択かのような時代になっていく。旧帝国陸軍は坊主の規定があった。子どもも坊主が圧倒的主流。
ちなみにの話…
ここからは「ちなみに」なんですが、開拓の村にはもう一人、あの人のモデルでは?と気になっているマネキンがいます。
宇佐美の学校のモデルとなった「旧北海中学校」。子どもの頃の宇佐美がここから智春と「はよ はよ」と駆け出てくる(第226話)あの学校のモデルではないかと思われます。
ここは学校であったということと、この広さを生かして教育系の展示が充実しているのです。その中の展示がまたおもしろいのですが、そこに服の展示の一環として男女のマネキンがあるのです。
ここにカエコさんがいる。杉元と「ビーフスチウ」や「エビフライ」を食べたあのカエコさん。
一番奥の男児は学帽を被っているけど、幼少期の尾形にも似ている…
まあそんなことを言っていたらきりがないのですが、花枝子さんの髪型はマガレイトの亜種でしょうか、女学生に流行りのハーフアップ(半結び)のボリュームの持たせ方がこのマネキンとっても似ていました。
カエコ(金子花枝子)さんの人物としてのモデルは渋沢栄一の後妻となった渋沢兼子さんと言われていますが、写真をみると渋沢兼子さんの写真は作中の勇作さんの母親に雰囲気がよく似ておられます。なんかこう現実と作品がぐるぐる巡っている感じが面白い。作品のリアリティがどんどんあがっていく感じがします。
ゴールデンカムイは読み手にも伝わってくるほど取材の量が膨大なので、そこへ登場人物に実在の人物をいくつかモデルとして起用することでさらに現実味が増してどっぷり世界に入り込めるんですよね。改めて…すごい作品です
ゴールデンカムイで寄り道さんぽ#6開拓の村旧山本理髪店