今回はゴールデンカムイで寄り道さんぽ#9、江渡貝くん家にあるすごいものまとめです。前回までの記事でご紹介していないゴールデンカムイにゆかりのあるものだけをまとめてご紹介!鳥肌が立つほど珍しく美しかったあの剥製もありました。是非ご覧ください。
動画派の方はこちらからご覧ください。ブログでのご紹介はこの下に続きます
別記事江渡貝くん家に行こうでご紹介した通り、江渡貝くんの家のモデルである北大植物園内博物館本館は剥製だらけである。
その中のエゾオオカミについてはこれまた別記事エゾオオカミを見ておこうでご紹介したが、実はこれ以外にすごく貴重な剥製が数多くあるので、ゴールデンカムイに所縁の深いものに絞って詳しく見ていきたい。
エゾナキウサギ。たいへん小さくかわいらしい。ゴールデンハムスターより若干大きくモルモットより小さいといった感じ。
アシリパ「エルムが獲れた 下山したら森に入って丸焼きにして食べよう」
ゴールデンカムイ 第101話 鯉登少尉叱られる
エゾタヌキ。エゾタヌキは道内の動物園にこそ結構いるが、実際森で出会う頻度はエゾリスやキタキツネに比べるとぐっと下がる。おそらくキツネより臆病な性格なのだろう。キタキツネは観光客などに餌付けされてしまい車をおいかけてくることがあるが、タヌキはそんなにぐいぐいこない。それなのに交通事故により道端で亡くなっているタヌキは結構見かける……危機に面した時に死んだふりをする特性が裏目に出てしまっているのだろうか。今はまだ身近な動物でも今後の生息数がちょっと心配。とにかく顔がひたすらかわいい。作中では巣穴に先割れした棒を突っ込んで毛皮にねじ込んで引っ張り出す様子が描かれている。
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杉元「出た!!」
白石「わあっ☆可愛い可愛い」
アシリパ「白石!タヌキを絞め殺せ」
ゴールデンカムイ 第36話 役立たず
昔、ヒグマの糞はタヌキの糞と間違えやすいから注意するようにと聞いてぴんと来なかった。糞の大きさは体の大きさに比例する。いくらなんでも大きなヒグマの糞は分かるだろうと。
だがアシリパさんも言っているように、タヌキは溜め糞といって自分専用のトイレみたいなのを作って何度も同じ場所に糞をする。なのでヒグマの大きな糞と間違えやすい。タヌキの糞をヒグマのだとおもって山から撤退する分には困らないが、逆にヒグマの糞をタヌキの溜め糞だと見誤って先に進むと命取りになるかも。
エゾユキウサギ。実物はもうちょっと耳の先端の黒がはっきりとして分かりやすい気がする。経年でだいぶ色が抜けてしまったのかもしれない。
アシリパ「杉元! 見ろ ウサギがいる」
杉元「どこだ? 見えないぞ」
アシリパ「あそこに耳が見えるだろ 先の黒い」
ゴールデンカムイ 第6話 迫害
シマフクロウ。体重3~4キロなのに、羽を広げると180センチにもなったりする。
杉元「これまたでけぇフクロウだな」
アシリパ「羽を広げたら杉元より大きい」
ゴールデンカムイ 119話 コタンコロカムイ
ふつうフクロウはネズミなど小動物を食べるがシマフクロウは主に魚を食べる。そのためアシリパさんも小川に罠を仕掛けていた。
アシリパ「やったぞ杉元!! コタンコロカムイが罠に掛かってる!!」
ゴールデンカムイ 第119話 コタンコロカムイ
フクロウというのはバサバサという羽の音がしないようにできている(ネズミに気が付かれないようになっている)が、シマフクロウは魚を餌としているのでそういう羽の造りではない。実物はこの剥製よりもうちょっと耳みたいなの(耳羽)が目立つ。
札幌の円山動物園では近年でも(2021年)ヒナが生まれたりしているが、全体としてかなり餌場が減っているので、現在は人の手で給餌場を作ったりしている。自然環境が変わると今までたくさんいた動物が簡単にいなくなってしまうのが良く分かる。
クズリ。剥製ではあるが、クズリに北海道で会えるとは思わなかった。なんともかわいらしい顔をしている。ヒグマより凶暴と恐れられ杉元たちも苦戦していたがとてもそんな風には見えない。経年で紫外線により色は抜けていると考えられる。背中に二ヵ所、うっすら毛色が濃い部分がみられるが、ここはもっと足元のような黒っぽいこげ茶をしていたであろうと思われる。
見てくださいこのクズリのかわいいの塊のような顔!
クズリは大型の獲物は背に飛び乗って襲い掛かり、地面に倒してから食べる習性があり、そういえば作中も鯉登が背に飛び乗られていたしヒグマも背中からやられていた。凶暴というか、厳しい環境にいるので、餌のためなら手段選ばずといったところで必要に迫られる形で大型動物も襲うのであろう。大型動物に関しては死骸があれば通常そっちを優先するようである。極寒地帯のハイエナ。
哺乳類やその死骸の他に果物も食べるようである。昔は東京の上野動物園にもいたように思うが、現在都内の動物園にはいないらしい
クズリ このイタチ科最大級の猛獣は気性の荒さから現地ロシア人いわく「熊より恐ろしい」とのこと
ゴールデンカムイ 第141話 樺太アイヌ
ジャコウジカ(麝香鹿)。ジャコウジカもまさかここで見られるとは!…と嬉しい誤算だった。オスとメスとが展示されていたように見えた。結構小さかった。キョンに近い。上下二段になった展示ケースの下段に置かれていたのでかなり死角に展示されているといえよう。しゃがみこんで見る感じ。見逃さないようにしたい。
アシリパ「なんだろう あれ… 初めて見る」
キロランケ「麝香鹿(ジャコウジカ)だ 樺太アイヌはオポカイと呼んでる 牙があるから オスだな」
ゴールデンカムイ 第151話 ジャコジカたち
トナカイの角。この片方の角だけでジャコウジカくらいはあった。大きくて驚いた。そういえばトナカイは名前とイラストだけはクリスマスでなじみがあるが本物を見たことはあっただろうか、国内の動物園だと2022年現在7~8園で見られるほか、北海道だと幌野トナカイ観光牧場という所がある。作中は樺太編で幾度となく出てくる。
アシリパ「尾形 何を撃った?」
尾形「エゾジカだ」
キロランケ「樺太にエゾジカはいねえよ」
アシリパ「たしかにユク(エゾジカ)に似ているけど こんなの初めて見る」
キロランケ「馴鹿(トナカイ)だ」
ゴールデンカムイ 第159話 ウイルタ民族
館内にはエスキモー犬と樺太犬の雑種の剥製が数体展示され、その隣にはイヌゾリも展示されていた。馬そりは北海道開拓の村でよく見ているのであんな感じでしょとあまり気に留めていなかったが実物は馬橇とは全然違っていた(当たり前)。沖縄リゾート地などにあるバナナボートに似ている。ロープで繋がれている二本の棒が舵取り棒だろうか。
この剥製は館内で一番有名な剥製かもしれない。樺太犬のタロ。南極物語で有名になったと言って良いであろうか。1983年の映画なので若い方には馴染みが薄いかもしれない。しかも実際の南極観測隊は1950年代の話。
タロは昔南極観測に連れて行った樺太犬だが、悪天候に見舞われ人間のみ撤退し、15頭の樺太犬は事情もあって鎖につながれたまま南極に置き去りにされてしまった。その絶望的な状況の中、一年後に観測隊が南極に行くと生きているタロとジロが発見された、そのうちの一頭「タロ」である。タロとジロは日本に連れて帰ってもらえたが、実はもう一頭生存していたかもしれないという切ない話もあるがそれはまた別のお話。
展示ケースの映り込みが多く見えにくくて申し訳ないが、とても大きな黒い樺太犬だった。エゾオオカミと展示場所が離れているのだが、それでもエゾオオカミよりずっと大きいのが分かる。樺太犬とエゾオオカミは大きさがエゾジカとジャコウジカくらい違う。分かりにくいか。ヒグマとツキノワグマくらい違う。分かりにくい?ゴールデンレトリーバーと柴犬くらい違う。とにかく樺太犬タロは大きかった(ゴールデンレトリーバーより大きいと感じた)。アイヌ犬のリュウはこんな屈強な樺太犬に混ざって本当にやっていけたのだろうかとほんのり心配になるくらい大きかった。
この樺太犬タロは、余生をここ北海道大学植物園の敷地でのんびりすごした。今とあまり変わらないこの北大植物園の敷地でのんびりしているタロの写真が残っている。ジロはその後も南極観測に参加したようである。
ちなみに南極観測隊は常時イヌゾリで観測調査していたわけではない。雪上車が厳寒の地で故障した際の移動手段であった。当時の最新設備より頼りになるのがこの屈強な樺太犬だった。樺太アイヌが生活していく上で犬を大事にしたのが良く分かる。
エノノカ「犬は……私達の家族と同じ」
ゴールデンカムイ 第142話 在留ロシア人の村
そして次が非常に珍しく、なおかつゴールデンカムイに欠かせない剥製
エトピリカ(エトゥピリカ)の剥製。館内で一番感動を覚えた剥製かもしれない。館内のヒグマやエゾオオカミの剥製はよく話題になるのだがこのエトゥピリカの剥製はここにあるとは今まで知らず、小さくあっと声が漏れた。
北海道らしいイラストが描かれる際、ヒグマやキツネ、丹頂鶴なんかとならんでこのエトゥピリカが描かれることがあるが、いかんせん実物を見たことがない。ラッコはたまに夕方のほのぼのニュースで話題になったりするが(ここに来ると最近ラッコが見られます的な)、エトゥピリカはその類でも見たことがない。剥製も気軽にあちこちあるようなものではない。一応2021年時点で少なくとも4羽は生息はしているようではあるが、つがいが発見できなかったそうで、繁殖していないとなると今後は絶望的。もし繁殖が確認できても血が濃いとかないんだろうか。少なくともエトゥピリカは数いる中から伴侶を見つけるような環境にない。
エトゥピリカの剥製はたいへん美しく、息をのむようなリアルさがあり、一目見ると一気に物語の中に惹き込まれた。
キラウシ「エトゥピリカだ アイヌ語で『くちばし』が『美しい』という意味の海鳥だ これはくちばしの部分だよ」
ゴールデンカムイ 第151話 ジャコジカたち
繁殖期が終わると取れてしまうという くちばしの上部の部分も剥製にはついているように見える。
人斬り用一郎が大事に持っていたであろうこのくちばしは最期の場面で本人の元に。
土方歳三「犬童四郎助から取り返してきたぞ このあたりにしかいない海鳥だそうだな」
人斬り用一郎「根室を忘れないようにと 妻が…」
ゴールデンカムイ 第154話 残り時間
人斬り用一郎は迎えに来た妻と二羽のエトゥピリカになって羽ばたいていくような胸の詰まる美しい演出のシーンが蘇る剥製だった。エトゥピリカは保護活動があるが、もうあまりに減少しすぎて種の保存は絶望的との声もある。
アシリパ「カワウソの頭の丸ごと煮だ 杉元 食べていいぞ」
ゴールデンカムイ 第14話 遠吠え
アシリパ「オオワシは足まで煮て食べる 杉元 白石 食べていいぞ」
ゴールデンカムイ 第32話 怪奇!謎の巨大鳥
アシリパ「フン トリ フンチカプ」
ゴールデンカムイ 第108話 大湿原
ツシマヤマネコの剥製。作中出てくるのはオオヤマネコだがやはり雰囲気が似ている。こちらの方がだいぶ小さそうではあるが。
作品と関連のあるもののみざっと紹介したが、他にも館内は剥製であふれている。江渡貝くん家はまさに剥製だらけ。江渡貝剥製所のモデルにこれ以上ふさわしい建物はないかもしれない。
明治期に官営としてはじまったこの北海道大学植物園内博物館では、令和の今も剥製作りの先駆者たち渾身の剥製が、絶滅した動物や絶滅危惧種も含めずらりと展示されている。ゴールデンカムイ内の江渡貝くんの台詞が重なる。
江渡貝「いかに生前の姿を活き活きと再現できるか 剥製屋の腕の見せ所ですね」
ゴールデンカムイ 第71話 職人の鑑
最後に江渡貝くん家のモデルとなった北大植物園内博物館の場所です
ゴールデンカムイで寄り道さんぽ#9江渡貝くん家にあるすごいものまとめ