今回は旧青山家漁家住宅。鰊御殿である。辺見が働いていた鰊番屋他、作中のさまざまなシーンで登場する重要な建物。
日泥の女将「さあ毎日飲み食いした分働いてもらうよ用心棒の皆様方ッ」
ゴールデンカムイ第57話『水泡』より
玄関を入ると土間があり、右は網元家族の居住スペース、左がヤン衆と呼ばれた漁夫たちのスペース。この真ん中が台所となっており大きな釜が二つある。実際ここで豪快に煮炊きしていたのであればセントラルヒーティングの役割も担っていたかもしれない。上には番傘がずらりと並んでいて、作中にもそのまま登場しているが、この番傘どうやって取っていたのだろう。元は玄関付近にあったのだろうか。別のニシン番屋でもここまで数は多くないがやはり高い位置に並んでいたのを見た気がする。
右にハシゴがあるがその上(上の右?)が小間使いの部屋だったと言われている。お手伝いさんもまた漁夫同様屋根裏さながらの所に寝ているケースが多い。
永倉に「人の情を持ち合わせていない」とまで称された日泥の女将(永倉もまあまあバシバシと容赦なく斬っていますけども)だが、男社会で一人、負けずにやっていくために変わらざるを得なかった雰囲気もあり個人的には嫌いではない。千代子に扮した永倉のおなか(のはりぼて部分)が撃たれたとき、日泥親子の三人の顔が並ぶが、意外と女将が一番すごい形相をしているのもまた、女将の心中はまだまだ人間味があるのではと思わせてくれる。
親方家族のスペースより
日泥保「そんなもん相談するまでもねえ おとなしく交換しろ
千代子に何かあったらどうすんだ」
ゴールデンカムイ第57話『水泡』より
親方家族の居住スペースにはいつ行ってもこのペラペラの毛皮が敷かれているが、これはなんの皮だろう。熊にしてはモフモフ感が足りない気がする。アザラシだろうか。実際こんな風に使ったんだろうか(保温もクッション性もない気がしてならない)。作中ではもうちょっとアザラシっぽい柄で描かれている(第57話の6頁目あたり)。
天井周りの小物もそのままで臨場感がある
ちなみに上の画像奥に、木の板があり細かく文字が並んでいるのが見えるだろうか。大きく映したものがこちら
板が新しいので復元かとは思うが、この板はどの船に誰が乗っていて、船頭が誰なのかを記したもの。有事の際に乗組員が分かるようになっている。青山家は全盛期漁船130隻を有していたとされるが、全ての船に第何号と振られ、その乗組員をこうして管理していたと思われる。
日泥の女将「燃えてんのはうちの物置だ」
ゴールデンカムイ第59話『雪原の用心棒』より
作中にも映っているが、廊下と呼ばれるの建物の隣、画像中の左に石壁が少し見えている。これは青山家の母屋(鰊御殿本体)で、簡単には周囲からの火が燃え移らないよう背面を石壁で守りを固めている。さすが御殿。ここまでの鰊御殿はそうないのでは。大正期につくった鰊御殿がこの形にしているので明治期には大火で鰊御殿を一度失っているのかもしれない。何度でも造りなおせるくらいのお金があった青山家。
ちなみに「廊下」とは一時的な鰊の貯蔵庫で、現在は枠船が二隻も収められているので是非中も見ておきたい。迫力がすごい。
そして上の画像とこの廊下の内部も樺太編の最後に登場している
アシリパ「杉元こっちだ こっちから出るぞ」
杉元「逃げる先に 当てがあるのか?」
アシリパ「ある!!」
ゴールデンカムイ第212話『怒り毛』より
一旦母屋に戻って、漁夫たちの寝泊まりスペースより
尾形「親殺しってのは……巣立ちのための通過儀礼だぜ」
ゴールデンカムイ第59話『雪原の用心棒』より
尾形「どんなもんだい」
ゴールデンカムイ第59話『雪原の用心棒』より
辺見の働いていた漁場のモデルでもある
杉元「せめて忘れないでいてやるのが俺の償いさ」
ゴールデンカムイ第39話『ニシン漁と殺人鬼』より
そして親方家族の一番奥の主人の部屋
尾形「あなたは こなかった」
ゴールデンカムイ第103話
移築前は分からないが、現在この親方の部屋の窓からは海を模した池が見られる。
個人的に巡り合わせに感動したモデル地の面白さ
そして、ここからがなんとも作中の環境と真逆で、巡り合わせとでも言うのか、とても面白い。
作中、勇作殿が生まれた後は一切尾形親子に関知しなかった花沢中将だが、モデル地では親方の部屋の窓からは尾形が幼少期に住んでいたモデルの家(旧秋山家漁家住宅)が見え、親方は四六時中ここから尾形を見守っていた形となっている。
なんという巡り合わせか…… 。周囲は森林で、ここからは尾形の家以外みるものがないくらい良く見えている。
親方は毎日ここから尾形母子を見守っていたのではなかろうかと思うような位置関係にある。
長くなってしまいました。旧青山家漁家住宅はまだモデルとなった場所がありますので続きは次回へ。ここまでありがとうございました。
“実は尾形の父は窓から毎日尾形を見ていた?巡り合わせに驚くニシン御殿|ゴールデンカムイで寄り道さんぽ#40” への1件のコメント
[…] 前回の続きです。樺太でのこのシーン、モデルとなったのはこちらの青山家漁家住宅ではないかと思われる。青山家の米倉にはこの米俵の量。スペース的にはまだまだ余裕があるほど広 […]