駅逓所とは駅直結ホテルのようなもので、駅、旅館、そして郵便局が一体化したようなところです。線路の引ききれない広い北海道には合っていたようで
駅逓所(えきていじょ)
旅館・運輸・郵便などを担っていた施設であり開拓のために存在した
北海道独自の物で当時は北海道に二百箇所以上あった
ゴールデンカムイ第117話『網走へ』より
との作中解説があります。どこまでをカウントするかにもよりますが100ヶ所以上は確実にあったものです。半官半民という形態をとっていて、官の確実性と民の融通が利いたおもてなし、結構良い施設という印象です。
馬を借りることも可能で数十キロごとに点在する駅逓所間を送迎してもらえるため
杉元たちも懐に余裕があるときは利用していたと考えられる
ゴールデンカムイ第117話『網走へ』より
こんな便利なもの、北海道だけでなく全国にあったらよかったのにと思っていましたが、開拓が一通り済んだら町全体が便利になりインフラも整うので役目を終えるのですね。それで本州以南にはこういうものがなかったのだとこの解説で気が付きました。歴史的に見たら本州では江戸時代の飛脚や人馬継立などがちょっと近いですね。北海道では宿場町の代わりにこういうものがぽつんとある感じでしょうか。
夏太郎「油問屋にあった刺青人皮です 稲妻強盗は第七師団に獲られました 亀蔵もあいつらに…」
家永「亀くん…」
永倉「ご苦労だった 夏太郎」
ゴールデンカムイ第117話『網走へ』より
紋付の着物を着ている中央の方(マネキン)が駅逓所の主でしょうか。その位置に土方歳三さんが座っていました。左の旅人の位置に永倉、となりの畳の部屋に家永が座っていたシーンです。この囲炉裏は土間となって続いていてここから勝手口のように出入り出来ました。そこから今来たばかりの夏太郎が入って来たところのシーンでした。
牛山「誰もいなかったぜ」
永倉「独りだけなはずはない ここをすぐに立ち去らねば」
土方歳三「夏太郎のやつ泳がされたか 油問屋の刺青人皮も偽物の可能性が高い やられたな」
ゴールデンカムイ第117話『網走へ』より
ここでは、宿泊する旅人をもてなす様子がマネキン+人感センサーの自動音声(マネキン同士の会話)で紹介されていましたが、本当にあたたかみ溢れる会話で官営のみだったらこうはいかないだろうという感じです。他愛もない会話をしながら、笑顔で旅人をもてなす女将さんは、会話を楽しみながらも馬の様子を気に掛けているのが分かります。駅逓所は官から補助が出る代わりに馬を大事に扱う義務がありました。駅逓所の主役は馬。ここでも厩舎があってその中に大事に飼われていた馬の様子が分かる野外展示になっています。井戸も厩舎と宿泊部分の間にありました。
牛山「厩舎の前に夏太郎のハッピが…」
牛山「……!! なんてこった…」
ゴールデンカムイ第117話『網走へ』より
厩舎は宿と井戸を挟んで向かいにあります
急に消えた夏太郎を探して牛山が厩舎に入ると夏太郎が家永の餌食(文字通りの意)になりかけていたシーン
夏太郎「助けて牛山ふぁん」
牛山「ダメだぞ家永!」ハ~…
家永「夏太郎くんの若い肌が綺麗で…」
ゴールデンカムイ第117話『網走へ』より
この厩舎はキロランケが急遽騎手となったあの競馬場の厩舎としても登場しています
調教師「馬主はヤクザの親分さんでね ほかの3人の騎手と結託して人気のない他の馬を勝たせようって計画だった」
ゴールデンカムイ第61話『蝦夷地ダービー』より
キロランケ「俺が乗るこの馬の名前は?」
厩務員「烈風だ」
ゴールデンカムイ第62話『替え玉騎手キロランケ』より
厩務員「いいかい?勝たせるのは6番だ 馬主の親分さんは6番に相当つぎ込んだらしい 6番を一着にしねえと俺たちぶち殺されるぜ」
厩務員「この水烈風に全部飲ませておけよ」
ゴールデンカムイ第62話『替え玉騎手キロランケ』より
以下、作中にはおそらく登場していませんが当時の土方歳三さんたちが続けていた旅の雰囲気が良く分かる内部の様子です。
こちらが表の入口です。
駅逓所とかかれた提灯がならぶ玄関。近隣の駅逓所の距離などが一覧表にまとめられています。〇里表記。
玄関には蓑や笠などがかけられています。遠い昔話の世界だけで使われていたのではなく、つい最近までの日本の姿なんだと思うなどしました
先ほどの3人を旅館側からみたところです。囲炉裏が土間と繋がっているのがこちらからだと分かりやすいですね。夏太郎があの開いている扉から入って来ました。
「駅逓所の周辺に住んでいた住民というのは情報が早かった」という話をきいたことがあります。旅人との交流でどんどん新しい情報が入ってくるわけですね。もしかしたら囲炉裏を囲んだ輪の中に実際は近隣住民も入っていたのかもしれません。
宿泊客にとっても近隣住民からこの町のことを聞けるので都合が良かったでしょうし、何よりちょっと楽しそうですね
奥まで歩いて行くと、お風呂とトイレ(左端に2つ並んでいる扉がトイレの扉です)がありました。駅逓所にお風呂があるのはありがたかったでしょうね。
宿泊部屋の様子です。こういったところに杉元達や土方歳三たちが泊まっていたということになります。ちょっとした囲炉裏なのか、くぼみがありますね。他にも少し大きさが違いましたが何部屋か用意されていました。上下に開く窓ですね
山で寝泊まりしながら杉元がアシリパさんからアイヌの文化を自然と学んでいったように、ホテルに泊まったりこうした駅逓所に泊まることもあったりしながら、アシリパさんも和人の文化に多く触れていったのでしょうか。