アシリパ「ここ 通り抜けられるぞ」
杉元「急げ」
ゴールデンカムイ第212話『怒り毛』より
アシリパ「外にいないか 気をつけろ」
宇佐美「あ!! いたいた」
ゴールデンカムイ第212話『怒り毛』より
前回の続きです。樺太でのこのシーン、モデルとなったのはこちらの旧青山家漁家住宅ではないかと思われる。青山家の米倉にはこの米俵の量。スペース的にはまだまだ余裕があるほど広い米倉だった。漁夫たちをたくさん雇うだけあり貯蔵量も桁違い。
鰊御殿はその脇に蔵がならび、それはもう長屋のようにいくつもの蔵を連結させたような建物になっていた。移築されたもの以外に取り壊されたものなどまだあったのではないかと思いを馳せる。開拓の村に大きな建物が移築される場合はその最重要部分だけなことが多い。(北海中学校や恵迪寮など)
ドスンッ (米俵を2つ落とすアシリパさん)
宇佐美(?)「ぐえッ!!」
ゴールデンカムイ第212話『怒り毛』より
米俵は一つ60㎏。この見上げるほどの高さの場所から120㎏のものを躊躇なく立て続けに上から第七師団の兵士に落とすアシリパさん。
ゴールデンカムイの登場人物は、不死身の杉元以外も簡単にはしなない屈強揃いではあるが、それでもアシリパさんが相手に危険を負わせるこのシーンがなかなか印象的。この頃からこの小さくて美しい少女の中に「地獄に落ちる覚悟」が芽生え始めていたのだろうか。
蔵にはとにかく当時の道具がたくさんあり、使い込まれたその道具一つ一つにドラマを感じる。過酷と言われる鰊漁場ですが、やはりどの鰊御殿もこうして臼と杵がたくさんあることから時には餅を振舞ったりお酒を振舞ったりしていたことが伺える。お酒はもう漁場で醸造していたのではという規模でスペースをとっている跡が見られる鰊御殿もある。
鰊漁場も、最初は結構ひどい環境で、お金に困ってやらざるを得ない訳アリの人々(辺見の台詞にも『ニシン漁で日銭稼ぎに来るヤツなんていろんなこと抱えてる流れ者がほとんど』の台詞にもそれが伺える)を集めていたようだが、だんだんとそのシステムが根付くと、雇う体制が整えられていき、出稼ぎ人数の大半を占める東北ではそれを管理する今でいう「派遣会社」の役割を担う管理元もあったようだ。雇人が勝手に逃げてしまったりするとここが責任を取ったようである。
各番屋で待遇の良さをアピールして人材を確保していくようになると、出されるおやつまでもがアピールポイントになったようで、別記事で触れたが莚3枚で寝かされていたのがこうして大正期の鰊御殿では布団にかわっているのも待遇改善の一つかもしれない。
一方その頃漁獲量は大幅に減り始める時代なのでゴールデンカムイの時期を過ぎたあたりの番屋は多少その辺り苦労があったかもしれない。
枠船とは鰊を獲る為の船。両サイドから2つの枠船で挟むかのようにしてニシンのたくさん入った網を持ち海岸へ向かう。それ1回の作業で千両儲かると言われたほど明治期はたくさん獲れた鰊。こんなに洋燈があるということはやはり漁というのは暗いうちから行われたのだなと。
鰊御殿の周囲には辺見さんが教えてくれたニシン漁の道具や設備なども並んでいる
辺見「集積所でさばかれたあと こうやって干されたものが「身欠きニシン」です」
辺見「ニシンは脂が多いから 寒風でしっかり乾燥させる必要があるため 北国で加工するのが適しているんです」
ゴールデンカムイ第39話『ニシン漁と殺人鬼』
動画派の方はこちらも是非ごらんください。鰊御殿や蔵の中、廊下とよばれる鰊用貯蔵庫などもゆっくり巡っています