人斬り用一郎が最期に見ていたものが凄かった話|ゴールデンカムイで寄り道さんぽ#34


根室 車石

土方歳三「いま 楽にする…」

人斬り用一郎「いや… このままでいい 

        楽に死ぬのは申し訳ない」

ゴールデンカムイ第154話 『残り時間』より

根室の車石。ここはゴールデンカムイで人斬り用一郎が最期を迎えた場所として登場する。ものすごいスピード感を保ったまま、もうはっきりとはしなくなった土井新蔵の脳内の過去の記憶と今起こっている現実の、際際な境目を流離う神回。

このあたりの海岸の岩はすべてこのようなレンガでも積んだような形状をしている。

このレンガのような玄武岩が視界いっぱいに広がっている

6000年前に熱いマグマと海水によってつくられた自然の芸術作品。中でも根室車石のような大きな車輪状の岩は世界に類を見ないらしい。

土井新蔵は最期のシーンでこの車石を背にしているが、その時土井新蔵が見ていた景色がすごかった。

何度も何度も岩に波が激しくぶつかり、
そのたびに眼前で真っ白な車石のごとく荒々しい波しぶきが浮かび上がる。

車石を背にすると見えるのは土方歳三や土井新蔵が歩んできた人生のような荒々しく打ち続ける波。二人の生きた激動の時代を象徴するかのような場所で感動した。波は毎回見応えが素晴らしく、時間を忘れて見ていられるのでもし行かれる方は予定時間を多めにお取りください。

そしてその先に見えるのは突如現れるユートピアのような断崖絶壁に囲まれた平らな島。

人斬り用一郎が見据える先には今でもエトゥピリカが暮らす無人の離島
モユルリ島とユルリ島。
点のようにしか映っていないがこのときたまたま黒い二羽の海鳥が横切った
遠くに見えるユートピアと荒々しい波、その両方を見ながら旅立った土井新蔵

このモユルリ島とユルリ島には今でもエトゥピリカが暮らしていて、野生化した馬の子孫が代々自由に暮らしている。作中は土井新蔵の最期にまるで妻が迎えに来たかの如くエトゥピリカが現れ、二羽のエトゥピリカとなって飛び立つような美しい描写が見られたが、残念ながら現在は根室でもエトゥピリカが見られることはほぼない。日本に暮らす野生のエトゥピリカはモユルリ島まで見に行くか札幌駅近くの北海道大学植物園内の博物館に北海道のエトゥピリカの剥製が展示されている。

エトゥピリカの剥製

キラウシ「異性を惹き付ける飾りみたいなもんで

    繁殖期が終わると剥がれ落ちるんだ」

永倉「よく知ってるな」

ゴールデンカムイ第151話『ジャコジカたち』より

確かにくちばしの上部分は取れてしまうのか剥製もよく見ると針金で留めていた。博物館内にあった分布図では青森まで生息範囲になっており、昔自然が豊かだった頃は青森でも見られたのかもしれない。

動画派の方はこちらもぜひご覧ください。波の様子や一部波の音も含みます

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