今回は旧山本理髪店です。もはや有名すぎて語る事はないのかもしれませんが、
以前のあの店に尾形がいるの記事で取り上げなかったこの店の良さに焦点をあてて巡っていきます
茨戸で登場する旧山本理髪店。作中でも山本理髪店として登場している。旧札幌停車場と同様、作中で一番そのまま登場している建築物かもしれません。作中の店主さんがなかなか良かったです。
傾斜の急な切妻屋根、玄関の雨よけアーチなどが外観で特に評価されている旧山本理髪店。なんと昭和61年まで営業していた。もうあと一歩で平成までいけましたね。場所は円山地区。札幌市内でもオシャレな一角で、東京に例えるなら…青山の表参道とか(実際にあったのは北海道神宮の裏参道)、あとは代官山みたいな地区といえるでしょうか。こちらのお店もおしゃれな外観なことは一目瞭然です。
ドアの上にあるガラス、上下を組み替えて幾何学的にしているのがデザイン性高くて好きだったので、このガラスが作中何度も登場したのは連載当時とても嬉しかったのでした。署長の背景(店舗内側)その他のカットで登場しています。
理髪店主「誰も気にしねえよ そいつらもこの町に来たばっかりの人殺しだ」
ゴールデンカムイ第55話『鰊七十郎』より
ちょうどいい感じにドアが開いていました。作中そっくりな風景。この建物は分かりませんが冬は扉を閉めないようにという札が掲げられていることが多いです。開け閉めで建物に負担がかかるのでしょうか
外壁や扉、窓枠の白い塗装、それが剝げかかって木の色が見えがちなところ、窓ガラスは下半分曇りガラスなところ。出窓、窓にまで降りかかる雪、すべてが良い雰囲気です
料金表
刈込 参拾五銭(35銭)
丸刈 参拾銭(30銭)
顔剃 貮拾銭(20銭)
子供刈 拾五銭(15銭)
店主
子ども料金がなんと顔剃よりお安いの良心的。子どもってじっとしてくれないし泣いたりで本来は大人よりたいへんかもしれませんが(笑)キッズ料金って昔からあったのだなあという小さな発見もありました。
ヘアカタログのようなものが貼ってあります
こちらがその回転椅子でしょうか。見るからに高そうな、質が良さそうな、頑丈そうな。そんな回転椅子です。装飾もあって、オットマンとでもいうのか足乗せ台もあります。
尾形(ではないけどそっくり)が顔そりをしている手前にある椅子が、この頃(大正期)減っていく四つ足の「半寝椅子」でしょうか。どちらもあるのが野外博物館的には最高の展示です。ここには永倉が座って土方歳三のヘアカットを待っていました。
理髪店主「あんたら歳の割にはめっぽう腕が立つようだな どっちに売り込む気だ?」
永倉「…どっち?」
ゴールデンカムイ第55話『鰊七十郎』より
永倉は理髪店にたいして用事がないかもしれませんが(髭のお手入れはしていたかも)、空いている椅子に気軽に座っています。その気軽さというか昔の寛容さのようなものが店内全体の雰囲気から見て取れます
この旧山本理髪店に入ると、センサーがそれを感知して音声が流れ始めるのですが、客と店主の世間話です。ずーっとああでもないこうでもないと、よく聞くとちゃんとご時世を反映した話をしていてさすが博物館なのですが、理髪店主と順番待ちのお客さん、なんならもう髪を切り終わったお客さんまで交えて世間話が進むかのような、そんな空気が流れる建物です。
このベンチも、見るからに頑丈そうでまだまだ使えそうです。先程の回転椅子や半寝椅子なども含め、すべて用の美というか、いいものを揃えて長く使うを地で行っていた理髪店だったと想像できます。
永倉が座っていた「半寝椅子」。よく見るとサイドに金属製のレバーがあり、これを倒すと背もたれに角度が付いたのだと思われます(触ることはできません)。作中にもしっかりこのレバーが描かれています(第55話、第57話等)。この椅子もまたみるからに頑丈そうで、デザインも素敵で、一部革張りなのか頑丈に鋲が打たれていて美しいです。
コートが掛けられているのもいい感じです