10年前になるだろうか。『釧路にいったらスパカツだから』と聞き、行ってみた(素直か)。
正直最初はそんなに気が進むものでもなかった。スパゲティにカツのせるなんて自分でもできそうな気がして。
1959年創業の釧路の洋食店「レストラン泉屋」。ジュージューと音を立てて運ばれてきたスパカツ。これが予想の倍以上のボリューム。ミートソースもメニューのサンプルよりたっぷりだ。惜しげなくドバーッと。カツを抜きにしても二人前ではないかというボリューム。やっぱり港町の食事はダイナミック。
世の中には話題性のためにわざと食べきれない大盛メニューを出すところもあるけれど、こういった地域に根付いた大盛はなんだか気持ちがいい。威勢よく働く人々の胃袋を支えてきたという感じがする。その土地の歴史の一端を見ているようだ。地方に行くと大盛が多くて、都会は量が少ない傾向があるのは、材料費や人件費、そしてテナント料…という費用面のみならずデスクワークか肉体労働かという主たる職種にもかかわってくる気がする。
西のあんかけ焼きそば、東のスパカツ
真夏でも寒い日がある釧路に、熱々の鉄板でとろみのあるソース料理は喜ばれること間違いなし。とろみは料理を冷めにくくするし、鉄板はしばらくジュージューと料理をあたためてくれる。ああ寒い釧路にぴったりな料理だなと思って食べていると、まったく違う料理が思い浮かぶ。それは小樽のあんかけ焼きそば。
あんかけ焼きそばもスパカツ同様自分でも作れそうな感じもあるしまあ日本中どこでもあるメニューにも思えるんだけど、小樽では桁違いに愛されている一品。たっぷりと腹持ちの良いメニューは海の街小樽で働く多くの人の胃袋を支え、冷めにくいあんかけは寒い小樽にぴったりと合ったのだろう。小樽と釧路、直線距離270kmと遠く離れた2つの街で、人々に喜ばれるのはやっぱり同じ「温まっておなかいっぱいになる食べ物」だったんだ、と思うと北海道を知るうえでなんだか感慨深い。
ちなみにこのスパカツ、食べているうちに鉄板で焼かれてカリカリになった麺を楽しむのが良さの一つと知ったのはだいぶ経ってから。この時は早く食べないと麺が焦げるという一心で、鬼の形相で早食いした。焦げ付くまではいかず、麺がカリカリでおいしくなるそうなのでどうか焦らずお召し上がりください。
あと、最初の方で「自分でも作れそうだし」なんて調子乗ってましたが実際はいろいろ工夫されていて、この濃厚なミートソースでないと麺とカツ両方に合わないんだなと、やはりプロの技術で実現しているメニューで自分では無理そうでした。
スパカツは港町釧路に根付くべくして根付いた料理なのだと思うと、やはり”旅”の観点からは一度食べておきたいメニューかもしれない。お値段は900円くらいだったかな。本来カツは別皿と考えると大皿2つ分の料理が運ばれてきたことになる。これで1000円しないのはなかなかすごい。※価格は変動することがあります