前回は市民雪像でしたが、今回はシリーズ最終回として、匠の技を持つ方々が作り上げた作品です。やはりこれらは芸術性がすごい。巨大雪像でもないのにおもわず感嘆の声をあげてしまうほど素晴らしい作品の数々をご紹介します。
今回ご紹介する雪像たちは本当に見ておいた方がいいものばかりなのですが、とくに国際雪像コンクールは大通会場の端にあり、運営サイドとしては端から端まで目玉ありとするため会場を端に設置したのかもしれませんが、ここまで歩いてくる人が若干少なかった感が否めません。ここに来るまで何度も横断歩道を挟むので、途中で大通駅や街中に流れてしまう人も多かったのでしょうか。ここまで見ずに帰ってしまった方もいらっしゃったのかもしれません。でも心配ご無用です!ここで早速見ていきましょう!
「温もり」(モンゴル) 国際雪像コンクール会場から
モンゴルからの作品。キツネがぐるりとえりまき状にまるまって、赤ちゃんを守っています。その中ですやすやと眠る赤ちゃん。冷たい雪で、氷点下の続く気温の中で、「あたたかいもの」を表現したすばらしい作品。限られた雪の塊で素晴らしい構図を設計。カーブも綺麗で見とれてしまいます。
案内掲示にはこう書かれていました
「モンゴルではずる賢い動物であるキツネが赤ちゃんを邪悪なものから守ると考え、フェルト製のキツネの飾りをベビーベッド上に吊るす習慣があります。この雪像、「温もり」は、吹雪の中、山になって少年を守り、家のようにあたため、母のように愛するキツネを表現したものです。柔らかな雪が降る札幌の空の下で穏やかに眠るキツネと少年が、さっぽろ雪まつりの来場者に平和をもたらすことを祈ります。(雪まつり会場案内掲示板より)」
日本でも昔話にたくさんキツネが出てきますが、同じくずるい役回りが多いですね(笑)モンゴルでもキツネは「ずる賢い」というイメージがあるんですね。おそらくそれだけキツネは賢いんだと思います。なかなか罠に引っかからない、一枚上手を行かれると人間としては「ずるい」と感じるのでしょう。カラスも賢いのであの手この手で人間を困らせたりしますが、その賢さは時々ずるいと感じさせるものです。
なんでずる賢いものをわざわざ赤ちゃんの周りに置くのか、という疑問もありますが、おそらくずる賢いものは、味方につけたら逆に心強いのでしょう。私の聞いた説では、モンゴルで赤ちゃんの頭上に飾るキツネは、親(父親だったかな?)の手作り。つまり父が作ったキツネ(=味方)が本当のキツネ(=敵)から守るという構図です。生まれたばかりの赤ちゃんの睡眠中に不幸が起こることを「キツネに連れていかれる」という表現をする風習もあったようです。そうならないようにずる賢いものを味方につけて赤ちゃんを安全な環境に置くということなのでしょうね。
最初、あまりの曲線の美しさにキツネだと気が付かず、モンゴルの風習の赤ちゃんをぐるぐる巻きにするあれだと思って見ていました。本当にぐるぐるぐるぐる、すごく巻くんですよね。保温の関係もあるのでしょうが。
私はその風習をその昔ムツゴロウさんの番組で見た覚えがあるのです。昔過ぎて記憶が違っているだけかもしれませんが、ムツゴロウさんは世界中の動物を見て回っているからなのか世界の文化にも詳しかったようで、巻き巻きされる赤ちゃんを見ながら「こうして悪魔につれていかれないようにするんですね」「寒い国だから(保温の効果がある)なんですね」というようなことをおっしゃっていた気もします。そんなテレビの一コマを思い出しながら見ていました。
余談ですがムツゴロウさんは他の国でもこんなことをおっしゃってました。ある国の民族がムツゴロウさんを食事でもてなそうと鹿の類の動物をいきなり目の前で絞め殺しているときも、ムツゴロウさんは顔色一つ変えず落ち着き払って「窒息させているんですね」「これ(手を緩めず一気に窒息させること)は〇〇族の優しさなんですね」などと解説されていて、各国の文化も尊重される方だなと思いました。まあ本当に幼い頃の記憶で多々あいまいな部分ありますが。
話を元に戻しましてモンゴルの「温もり」は国際雪像コンクールでみごと1位を受賞していました。
「ナーガの火の玉」(タイ) 国際雪像コンクールから
タイのチーム制作によるものです。龍神様の姿が素晴らしいですね。
タイのメコン川にて実際にこういうお祭りがあって、そこでも龍神の張り子というんですかね、ねぶた祭りみたいなああいう感じでたくさん龍がいて、オカルトではなく自然発生する火の玉を眺めるというお祭りです。自然発生なのでお祭り期間中に火の玉が発生しないこともあるようです。火の玉の正体はなんなんでしょう。川底からガスでも発生しているのでしょうか。しかも火の玉の色はピンクなんだそうで、詳しくは分かっていないとのこと。神秘的ですね
アップで見ると歯まで細かくずらりと彫られていて本当に驚かされます。
・「ふる」 (from本郷新記念札幌彫刻美術館)
札幌の美術家、工芸家の作品も見ることが出来ました。
その一つ「ふる」。
とにかく美しかったです。
上から下に流れるような感じで、水の玉や雪の玉に見える丸みもすごいし、ほんのすこし下が太くなってるのも流れの方向を見せてくれて美しいです。雪なので温度でほんの少し形が変わってしまってもいけないものを雪で作り上げる心意気。
・「個性」 (from本郷新記念札幌彫刻美術館)
本郷新記念札幌彫刻美術館からもう一つ。個性と題された作品です
雪で作ったとは思えないこの美しい直線はどうやって作るんでしょうか。こちらもちょっと端が溶けてしまったら全然違ってしまう作品で気温が上がらないことを祈ってしまいますが、潔いスパーンとした直線がとても美しかったです
一つ一つの板(?)が、大きかったり小さかったり、浮いていたり地についていたり、出っ張ってたり引っ込んでたり。美しいです
そんな訳でシリーズ5回に渡ってご紹介させていただきましたさっぽろ雪まつり2024、散歩が楽しい冬の大通公園でした。
最後の最後にすごかった話を
そうそう、おもしろかったのは雪像だけではありません。社会科見学としてなのかたくさんの小学生たちが来ていたのですが、その小学生たちに声を掛けられて「すみません、今お時間ありますか」と。アンケートですね。
かわいい小学生たちにそう聞かれたら断れません。何を聞かれるかちょっぴり身構えつつも答えようとしたら、なんとQRコードが大きく載ったラミネートフィルムを掲げてくれて、これで読み取って時間があるときにスマホで答えてくださいとのこと。
へえー今ここまで進んだのですね。なんだか教育現場の進歩に嬉しくなってしまいました。その場で聞き取ってこそ勉強、直接話してこそ勉強って、昔の先生なら言いそうですけど、答える側にしてみたら限られた時間で雪まつりに来ている人もいるので、これは良い配慮ですよね。雪まつりを楽しんだ後そのURL先を開くと、そこには小学生らしい質問が並んでいて微笑ましくなりました。
私がQRコードを読み取っている間、「やったー」と喜ぶ小学生たち。勇気を出して声を掛けてもなかなかここまでに至らないのかもしれません。アナログ世代の我々大人はどうしても口頭で回答してそれをメモり終わるのを待って…という繰り返しを想像してしまうので、アンケートというと「今時間なくて」って感じになっちゃうのも分かります。「頑張ってね~」と手を振って別れました。年を取ると小さな子がかわいいですね。