本当に作中そのものという感じの場所にあった蕎麦店、「三〼河本そば本店」

今回は三〼河本そば本店の建物。こちらも前回同様北海道開拓の村内に移築された建物。反対側から撮られることが多いので見過ごしがちだが、このような巨大な石蔵をもつ蕎麦店である。当時鰊で栄えていた小樽ならではの蕎麦店。作中何度か登場している。
こちらの建物は明治期のもの。明治後期になるがだいたい作品の時代設定とリンクしている(隣の蔵はおそらく大正期のもの)。どちらもたいへん保存状態がよい。石蔵なんかは新品に見える。

デカブツ「いやその客ってのがさ 変わった入れ墨をしてたんだってよ」
(第33話 『におい』より)
作中に出てくる建物はすべて作中の土地にあったものとは限らないが、この蕎麦店に関しては正真正銘小樽にあった蕎麦屋。小樽の中でも当時一番の繁華街であった通りに位置していた。鶴見中尉が食べていた花園団子のお店もこの通りである。
これもまた作中とリンクしていて、白石が高く積みあがった雪の石垣を蹴飛ばしてなんとか牛山から逃げるべく走り続けるシーンがあるが、ちょうどあのような繁華街にこの蕎麦店は位置していた。作中通りは狭く思えるが、今歩いてみてもけっしてそんなに広い通りではなく、さらに冬は雪がつもって道の両側に雪の山ができるのでさらに狭く感じる為、作中そのものという感じがする。現在は主たる道路からはずれ、駅からも少し離れるのでひっそりとしたエリアとなっているが、さすがに実際歩くと今も古い建物が多く、観光客もほぼゼロなので散歩好きにはたまらない通り。
上野画像の二階部分、本店なのに「東楼」という文字が見えるが、これはもともとは離れが存在していたからなのではないかなと考えている(推測)。離れは確か本店がここ開拓の村に移築されたあとも当時のままに残っていた。離れは住居用に変えて創業者の子孫の方が住んでいたかと思う。

白石「う…………!!」
牛山「よぅ…白石由竹」
(第33話 『呪的逃走』より)
上の画像の場面で、白石由竹が店(高級風俗店)に入ろうとすると暖簾越しに牛山と出くわす。その時この暖簾もそのまま作中に登場している。当時の風俗店が表向き蕎麦屋の体を成していた史実によるものだが、実際この蕎麦店があった近くにも遊廓があり、こちらの三〼さんはれっきとしたそば専門店だが、実際近くの遊廓内からよく出前の依頼があったと、この蕎麦店創業者の子孫の方が語っている記事を読んだことがある。札幌は官営の遊廓が一つあるだけだが小樽は少なくとも4つ以上の遊廓があり、私娼窟も相当あったことが推察されるので明治期は札幌とは比べ物にならない栄えぶりだったと言える(札幌も狸小路のあたりは私娼屈があったそうですが)。


1階厨房。レンガの煙突が美しい。真ん中にそばを茹でる大きな釜があり、たくさんならんだ漆器類にたいへん活気を感じる最高の展示。大釜から立ち上る湯気やそばつゆの良い香りがしてきそうである。
たくさん水を使う蕎麦店なのでもちろん井戸も店内に。上にはおかもちも並んでいる。これで近所や遊廓、港で働く人々の所に蕎麦を運んだのだろう。

そしてゴールデンカムイファン的に厨房で見逃してほしくないのは、一枚の貼り紙。

御献立表。メニューですね。こちらも作中に登場しています。杉元の後ろ。
女将「いまあたしがその娘を連れてくるからさ
蕎麦でも食べて待っててよ うちは蕎麦も絶品だから」
(第15話 『におい』より)
このときも「うちは蕎麦『も』絶品」「その娘を連れてくる」という発言がみられることから娼館を兼ねた蕎麦店として登場しているとみられる。第33話で店を出てくる牛山と白石が出くわす時も、白石が遊女と遊ぶといってから入ろうとしているので娼館を兼ねた蕎麦店として登場していると思われる。

一階は蕎麦店主家族の居住スペース。作中で牛山が第12話で土方歳三に見つかったのもこのあたりということになるだろうか。

奥に3部屋続く広い敷地。周辺地域の宴会場所を兼ねていたそうなので時には大宴会に使われたのかもしれない。襖を開け放して広い部屋として宴に使うことは日本家屋ではよくある。

階段だけ洋風。手すりは後の時代に洋風なものをとりつけたのではないだろうか。廊下に掛けられた提灯の列が美しい。夜の出歩きや出前に使ったのだろうか

1階一番奥はトイレ。


そして杉元が絶品だというニシン蕎麦、この開拓の村内で食べられます。
こういう施設内のレストランや食堂っていうのは、仕方なくそこで食べるものであっておいしいものはないと思っていましたが、この「開拓の村食堂」は違います。本当に絶品のニシン蕎麦が食べられます。お蕎麦も一見手打ち風の平麺(実際は分かりませんが)。この食堂目当てに来たいくらいです。

杉元「ツユが濃い… 関東生まれの俺好みだな
クチのなかでほろほろとくずれるこのニシンの甘露煮
ババアの言うとおり絶品だな」(第15話 『におい』より)
杉元の食レポ通りの味のものが食べられます。作中のものはなるとは入っていませんが。なによりこの甘露煮の大きさからしてすばらしいです。

食べる前に麺を持ちあげてみたところ。田舎風の平麺で暖かいお蕎麦にはよく合うおいしそうな感じが伝わると良いのですが。
動画派の方は是非こちらもご覧ください。ゆっくりと散歩しながらゴールデンカムイの当時の気分が味わえます。



“杉元が入った蕎麦屋のモデルと作品とのリンクがすごい…旧三〼河本そば屋本店|ゴールデンカムイで寄り道さんぽ#17” への1件のフィードバック
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