その6からの続きです。今回はこちら。今回は結構発見の多い玉垣でした。

この玉垣も傷だらけです。角に位置しているせいもあるでしょう。ただ大き目の玉垣であり良い位置にあるので多額の寄付をした実力者なのでしょうか。前回も書きましたが玉垣自体が本当はもっと多数あり、神社をぐるっと囲むようにまだまだあったのかもしれません。だとすると何本分か寄進していた可能性もありますが。現在はこれ一本でした。
まず読めるのは最後の楼の字。ということでこの玉垣も妓楼ですね。何楼なのかちょっとごちゃっとしていて分かりにくいのですがどうやら楼の上の文字は川。そして最初の文字は長という字のくずし字そのものです。ここまでで長〇川楼。
そして長という文字と川の文字の間にごちゃごちゃっと小さめの一文字があるように見えます。私はこれを谷と判断しました。

正直に言うと「谷」の字の上部分のハの字ははっきり見えまして、その下の人の文字みたいな部分もなんとか見えますが…下の「口」の部分がはっきりとは見えません。昔の口の字って、きちんと閉じないでくにゃくにゃっとさせて終わることが多いのでそれ系だったのではないかという推測と、実際に薄野遊廓に「長谷川楼」という大規模店があったという事実とを合わせて長谷川楼ではないかと推測しました。
もう一つ、長の字からはじまる妓楼が同時期の地図で他に見当たらないことも理由の一つです。
―――ここから先は動画では触れなかった話なのですが―――
ただ、一つ不可解なことが。
この玉垣だけ妙に文字と文字の間が詰まっていて小さい文字になっています。もっとひらたくいうと小さくごちゃごちゃっとしていてあまりうまく彫れてないように見えてしまいます(素人判断で)。
隣の北越楼とくらべても非常にギュッと文字が詰まっていて…それは彫った職人さんが違うからと言われればそれまでですが、周囲を見る限りもうちょっと見栄え良く作ることもできたはずなのです。
神社への寄進は本来信仰心からするものですが、この時期妓楼が神社へ寄進となるとどう考えても店の威厳・宣伝の意味もあったろうと私なんかは思ってしまうので、老舗だった長谷川楼ともなるといくらでも彫り直し・作り直しを命じることもできたのではなどとも考えるのですが。なんかそこが少し不思議でした。
文字が小さく彫られている理由の一つとして、以前みた玉垣のように右上に小さく文字が彫られていた可能性があります(それでもやはり小さくて詰まった文字なのですが)。それとのバランスを取って小さめの文字なのでしょうか。
もう一度玉垣を見てみます

長の文字の斜め上、ここに2~3文字なにか彫られているようにも見えます。
一文字目は花という文字にも見えるのですが、周囲に傷も多いので傷がたまたまそう見えるだけとも思えます。古地図には長谷川楼に関して「花〇〇」のような表記はありません。たとえば以前みた玉垣のように「魚政 〇〇〇〇郎」みたいな書き方だとすると右上が長谷川楼、主軸に楼主が来るはずです。
もしくはここには簡単な地名が来ることも考えられます。「銀座 〇〇〇」のように、「薄野 長谷川楼」だったのでしょうか。
薄という字のくずし字は四角で囲んだこの字にたいへん似ています。その下に野が来ていたのでしょうか。
野のくずし字はなんとも難しいかたちをしていて、ひらがなのみのような感じです。まあそうとも読めなくもないですが…
今のところ、薄野 長谷川楼 と書かれていたのではと考えています。
ちなみに長谷川楼はかなり初期からあり、古地図を追っていくとその発展に伴い手狭になったのか店の場所を移転して大規模店になっていたりしています。そのくらい人気店なので当時の書物にも「一等貸座敷」と書かれていて、長谷川楼は薄野遊廓のTOP5に入っていたようです。

左上のブロックに☆印がついているのが長谷川楼。地図でみてもかなりの面積を占めています。その隣に洋服新調所があり、見番(無料案内所のようなもの)があり、その隣が「料理西之宮」。これは以前の記事にも載せましたがこの料理店ものちに劇場を作ってしまうほどの財力のある料亭。ちなみに赤い☆マークがある妓楼が一等貸座敷と言われていた妓楼です。地図で見えている妓楼でいくと昇月楼もありますね。
ということで今回も遊女の名前ではありませんでしたが発見が多く面白みがありました。次回に続きます。
動画派の方はこちらも合わせてご覧ください。神社お参り後、玉垣を一本ずつ見ていく散歩です



“すすきのにある豊川稲荷札幌別院の玉垣に遊女の名が刻まれているらしい_その7” への2件のフィードバック
[…] 前回までは神社側から見て右側の玉垣を順に見てきました。やはり寄進者は薄野遊廓に関係する方々が多めでした。左側はどうでしょうか。 […]
[…] こうして実際に古い地図に載っているものが現物の玉垣として残っていると時空の狭間をさまよっているような面白さがありますね。それでは次回に続きます。ありがとうございました。 […]